【天上人閒】は、天上界と人閒界のことです。通じることが出来ない、とんでもない隔たりのたとえに
用いられます。
【閒】は、間の正字体です。門+月から作られた会意文字です。
夜に、門のすきまから月が見えることで、すきまの意味をあらわす字になりました。
【人閒】が、人の世。世間。の意味のときは『ジンカン』と読みます。
人間(ジンカン)万事塞翁が馬
人間(ジンカン)到る処青山あり
【人閒】が、ひと。の意味のときは『ニンゲン』と読みます。
白居易『長恨歌』の112句目に、 【天上人閒】会(かなら)ず相見(まみ)えん、の句として詠われています。105句~112句を示します。
105 迴頭下望人寰処 頭(こうべ)を迴(めぐ)らして下に人寰(ジンカン)を望む処(ところ)
頭をめぐらせ、下界の人間の住む所を眺めてみても、
106 不見長安見塵霧 長安を見ずして塵霧(ジンム)を見る
長安は見ることができずに、塵や霧が見えるばかりです。
107 唯将旧物表深情 唯だ旧物を将(もっ)て深情を表さんと
ただ昔の(思い出の)品によって深い気持ちを表そうと、
108 鈿合金釵寄将去 鈿合(デンゴウ)金釵(キンサイ)寄せ将(も)ち去らしむ
螺鈿の小箱と黄金のかんざしを、持っていかせましょう。
109 釵留一股合一扇 釵は一股(イッコ)を留め合は一扇
かんざしは割(さ)いた一本を、
小箱は(蓋か本体のどちらか)片方を残し、
110 釵擘黄金合分鈿 釵(サイ)は黄金を擘(さ)き合は鈿(デン)を分かつ
かんざしの黄金と、小箱の螺鈿を二つに分けました。
111 但令心似金鈿堅 但だ心をして金鈿の堅きに似せしめば
ただ、二人の思いが黄金、螺鈿のように堅ければ
112 天上人閒会相見 天上人閒(ジンカン)会(かなら)ず相見(まみ)えん、と。
天上であれ人の世であれ、必ずお会いできましょう。