自分でよく考えもしないで、人の言いなりになることを言います。
【唯唯:イイ】は、① はいはい。丁寧に返事する言葉。② 人の意に逆らわず従順なさま。
③ 自由に出入りするさま。 『新字源』改訂新版より。
【唯唯諾諾】の場合は、②の「人の意に逆らわず従順なさま」となります。
【諾諾:ダクダク】は、はいはい、と他人の言に従うさま、を言います。
【唯唯諾諾】は、『韓非子:カンピシ』八姦(ハチカン)篇に出ています。
『八姦』といいますのは、韓非子の時代の臣下が君主にたいして行う、八つの悪事のことです。
一に曰く、同牀(ドウショウ):すなはち、君主と添い寝をするものを利用することである。
二に曰く、在旁(ザイボウ):すなはち、君主のお側近くにいるものを利用することである。
三に曰く、父兄(フケイ):すなはち、君主のおじたちや兄弟すじを利用することである。
四に曰く、養殃(ヨウオウ):すなはち、君主の災いを助長することである。
五に曰く、民萌(ミンボウ):すなはち、民衆の機嫌取りを利用することである。
六に曰く、流行(リュウコウ):すなはち、流れるような弁舌を利用することである。
七に曰く、威強(イキョウ):すなはち、威勢の力を利用することである。
八に曰く、四方(シホウ):すなはち、外国の力を利用することである。
二に曰く、在旁、の説明の中に【唯唯】、【諾諾】分れてですが見られます。
優笑侏儒、左右近習、
優笑(ユウショウ)侏儒(シュジュ)、左右近習(キンジュウ)、
役者や道化者、君主の身の回りの従者のことであって、
此人主未命而唯唯、
此(こ)れ人主未(いま)だ命ぜざるも【唯唯】たり、
彼らは主君が命令も出さないうちから「はい、はい」と答え、
未使而諾諾。
未だ使わざるも【諾諾】たり。
何もさせないうちから「へい、へい」と従い、
先意承旨、観貌察色、
意に先きんじて旨を承(う)け、貌(かたち)を観(み)色を察して
主君の意向を先取りしてその意図をうけつぎ、
主君の顔色を見て取って、
以先主心者也。
以て主の心に先きだつ者なり。
主君の心を予測する者たちである。