お互いに持ちつ持たれつの関係にある事を表した四字熟語です。出典は『荘子』齊物篇です。
【蛇】は、へび。
【蚹:フ】は、蛇の下腹部にある「うろこ」で歩行の役目をもっています。
【蛇蚹:ダフ】で、「へびのうろこ」をいいます。
【蜩】は、せみ。日本では、「ひぐらし」を表す字です。
【翼】は、つばさ、はね。
【蜩翼:チョウヨク】で、「せみのはね」をいいます。
蛇は「うろこ」によって動き、「うろこ」は蛇によって動くことができる。
蟬は「はね」によって飛ぶことが出来、「はね」は蟬によってはばたくことができる。
罔兩問景曰
罔両(モウリョウ)、景(かげ)に問いて曰く、
ある時、(景をふちどる) 罔両(モウリョウ・うすかげ)が景に質問しました。
曩子行、今子止。
曩(さき)には子(シ)行き、今は子(シ)止(とど)まる。
君は、さっきまで行(ある)いていたのに、今は立ち止まり、
曩子坐、今子起。
曩(さき)には子(シ)坐(ザ)し、今は子(シ)起(た)つ。
さっきまで坐っていたのに、今は起ち上がっている。
何其無特操與。
何ぞ其れ特操(トクソウ・さだまれるみさお)無きやと。
どうしてそんなに主体性のない動き方をするのだ。
景曰、
景(かげ)の曰く、
すると景が答えました。
吾有待而然者邪
吾れは待(ま)つ有りて然(しか)る者か。
僕は(自分の意思でそうしているのではなくて、)頼るところ(人間の肉体)に従って
そうしているらしいね。
吾所待、又有待而然者邪。
吾が待つ所は又(また)待(ま)つ有りて然(しか)る者か。
(ところが)僕の頼る所は、また別に頼る所に従ってそうしているらしいね。
吾待蛇蚹蜩翼邪、
吾れは蛇蚹(ダフ・へびのうろこ)・蜩翼(チョウヨク・ひぐらしのはね)を待(ま)つか。
僕は蛇のうろこや、蟬のはね(のようなはかないもの)を頼りにしていることに
なるのだろうか。
惡識所以然、
悪(いず)くんぞ然(しか)る所以(ゆえん)を識(し)らん、
(自然の変化のままに従っている僕にとっては、)なぜそうなるのかも分からないし、
惡識所以不然。
悪(いず)くんぞ然(しか)らざる所以(ゆえん)を識(し)らんと。
なぜそうならないのかも分からない、と。