【仁にして佞ならず】と訓読されて、人柄は誠実なんだけれど、口下手です。という意味の四字熟語です。出典は『論語』公冶長篇です。
孔子の高弟『冉雍(ゼンヨウ)』についてのエピソードです。
冉雍、姓は冉、名は雍、字は仲弓(チュウキュウ)といい、魯の人です。
孔子より29歳若く、孔門十哲の一人で、徳行には仲弓と言われています。
孔子は、君主にしてもよい男だ、とエライ褒めようです。
子曰、雍也可使南面。
子曰く、雍や南面せしむ可し。
一国一城の君主にしても良い位の人物だ。
論語の中では「雍」と「仲弓」の両方で7回出てきます。
或曰、雍也仁而不佞。
或ひと日く、雍(ヨウ)や、仁にして佞(ネイ)ならず。
ある人が言いました。雍は、誠実で立派な人だが口下手ですね。
子曰、焉用佞。
子日く、焉(いず)くんぞ佞を用いん。
孔子は言いました。どうして弁がたつ必要があろうか。
禦人以口給、屢憎於人。
人を禦(ふせ)ぐに口給(コウキュウ)を以てせば、屢(しば)しば人に憎(にく)まる。
人に対応するとき、ベラベラと口達者だと、しばしば憎まれる。
不知其仁。
其の仁を知らず。
雍が誠実で立派であるかどうかは、わからないが、
焉用佞。
焉くんぞ佞を用いん。
どうして弁がたつ必要があろうか。