【水は方円の器(うつわ)に随(したが)う】と訓読みされます。
方(四角い器)に水を入れれば水も四角い形になり、円(丸い器)に水を入れれば水も円い形になります。ということから、人も環境や友達いかんで良くも悪くもなるということを表す四字熟語です。
『韓非子』外儲(ガイチョ)説左上第三十二に、孔子が言うにはとして
人君たる者は、猶(な)ほ盂(ウ)のごとく、民は猶ほ水のごとし。盂方(ウホウ)なれば水方(みずホウ)に、盂圜(ウエン)なれば水圜(みずエン)なり、と。
君主たるものは、たとえば盆のようなものであり、民はたとえば水のようなものである。
盆が四角ならば水も四角になり、盆が丸ければ水も丸くなる。
と記載があります。また『荀子』君道篇にも同じように
君なる者は槃(バン)なり、民は水なれば、槃圓(バンエン)にして水圓(みずエン)なり。君なる者は盂なり、盂方にして水方なり。
君主が盤であれば、民は水であるから、その容器の盤が丸ければ水は
自ら丸くなり、また、君主を鉢にたとえるなら、鉢が四角であれば水は
自ら四角になる。
とでています。
社会が善くなるのも、悪くなるも、政治の在り方次第という喩えとして用いられます。
日本では、平安時代末期から明治初期にかけて普及していた、『実語教(ジツゴキョウ)』という儒学ベースで、庶民のための教訓を中心とした初等教科書がありました。その中にも
「水は方円の器に随い、人は善悪の友に依(よ)る」
と出ていまして、古くから親しまれてきた言葉のようです。