多くの人が周りを取り囲んで見ていることを言います。
【衆人環視】が、よく見る形ですが同義で【衆目環視】もあります。
【衆】の、古い字形は、囗と三人とを組み合わせた形から作られた会意文字です。
囗は都市を囲む城郭の形。城郭の下に三人が並んで立つ形を加えて、都市の中に
多くの人がいることを示し、「多くの人、おおい」の意味となりました。
【環視】は、周囲からとりまいて見る、という意味になります。
『吾輩は猫である』の第7章、吾輩が風呂場をのぞく場面に【衆目環視】の記載があります。
しかるに今吾輩が眼下(ガンカ)に見下(みおろ)した人間の一団体は、この脱ぐ
べからざる猿股(さるまた)も羽織(はおり)も乃至(ないし)袴(はかま)も
ことごとく棚の上に上げて、無遠慮にも本来の狂態を【衆目環視】の裡(うち)に
露出して平々然(ヘイヘイゼン)と談笑を縦(ほしいま)まにしている。
吾輩が先刻(さっき)大奇観と云ったのはこの事である。
吾輩は文明の諸君子のためにここに謹(つつし)んでその一般を紹介するの栄を有する。