考え、好み、性格・性質などは、人によってそれぞれみんな違う、ということです。
【色】の字源は、白川静先生の『常用字解』によりますと
会意。人と卩(セツ)とを組み合わせた形。卩は跪(ひざまず)く人の形であるから、
人の後ろからまた人が乗る形で、人が相交わることを言う。
となっていました。
『吾輩は猫である』第2章に【十人十色】がでています。
ちょっと読者に断っておきたいが、元来人間が何ぞというと猫々と、事もなげに軽侮の口調をもって
吾輩を評価する癖があるははなはだよくない。
人間の糟(かす)から牛と馬が出来て、牛と馬の糞から猫が製造されたごとく考えるのは、自分の
無智に心付かんで高慢な顔をする教師などにはありがちの事でもあろうが、はたから見てあまり
見っともいい者じゃない。
いくら猫だって、そう粗末簡便には出来ぬ。よそ目には一列一体、平等無差別、どの猫も
自家固有の特色などはないようであるが、猫の社会に這入(はい)って見るとなかなか複雑なもので
【十人十色】という人間界の語(ことば)はそのままここにも応用が出来るのである