虎が鋭い目つきで獲物を見下ろす様子であったり、機会をねらって様子をうかがっていることを
表した言葉です。
【眈眈】は、にらむ、みおろす、の意味があります。
『易経』頤卦(イカ)に出ています。
顚頤吉。
顚(さかしま)に頤(やしな)わるるも吉なり。
下位の者に面倒見てもらうのも良しとする。
虎視眈眈、
虎視眈眈、
機会を逃さず、
其欲逐逐、
其の欲、逐逐(チクチク)たれば、
自分の徳をみがこうという欲を求めてやまないのであれば、
无咎。
咎(とが)なし。
差しさわりがない。
中島敦『弟子』十四章に【虎視眈眈】が出ています。
十年来、衛は南子夫人の乱行を中心に、絶えず紛争を重ねていた。
まず公叔戍(コウシュクジュ)という者が南子排斥を企(くわだ)て、かえってその讒(ザン)に
遭って魯に亡命する。
続いて霊公の子(太子)も、義母南子を刺そうとして失敗し晋に奔(はし)る。
太子欠位の中に霊公が卒(しゅっ)する。やむをえず亡命太子の子の幼い輒(チョウ)を
立てて後を嗣(つ)がせる。出公(シュツコウ)がこれである。
出奔(シュッポン)した前太子は晋の力を借りて衛の西部に潜入し【虎視眈々】と衛侯の位を窺う。
これを拒(こば)もうとする現衛侯出公は子。位を奪うばおうと狙ねらう者は父。
子路が仕えることになった衛の国はこのような状態であった。