疑いの心で人を見ると、確かな証拠がなくても、その人の言動のすべてが疑わしく思えることのたとえ、としての四字熟語です。出典は『列子』説符第八篇です。チョット長いですが、全文を掲げます
人有亡鈇者、意其鄰之子
人に鈇(おの)を亡(うしな)へる者有り、其の隣の子を意(うたが)ふ。
ある男が斧をなくしました。男は、隣の息子が盗んだのではないかと疑いました。
視其行步,窃鈇也
其の行歩(コウホ)を視るに、鈇(おの)を窃(かす)めしものなり。
歩きかたを見ると、斧を盗んだように見えます。
顔色,窃鈇也
顔色も鈇(おの)を窃(かす)めしものなり。
顔色も、斧を盗んだように見えます。
言語,窃鈇也
言語も鈇(おの)を窃(かす)めしものなり。
物の言い方も、斧を盗んだように見えます。
動作態度,无爲而不窃鈇也
動作・態度、為すとして鈇(おの)を窃(かす)めしものにあらざる無し。
その他の動作・物腰、することは一つとして、
斧を盗んだ人のしぐさでないものはありません。
俄而掘其谷而得其鈇。
俄(にはか)にして其の谷を掘って、其の鈇を得たり。
しばらくしてから谷間を掘り返したところ、その斧が出て来ました。
他日復見其鄰人之子,動作態度,无似窃鈇者。
他日復(ま)た其の隣人の子を見るに、動作・態度、鈇を窃(かす)めしものに似たる者無かりき。
後日、また隣の息子を見ると、
動作や態度に斧を窃(かす)めた人物と疑うような、怪しい点はなくなっていました。