【由言(ユウゲン)を易(やす)んずる無かれ】と訓読されます。なにか問題になりそうな言葉は、やたらに口にすべきではない、という意味です。『詩経』大雅篇の抑(ヨク)と題した詩に出ている言葉で、いろいろな戒めの言葉が詠われています。
『詩経』は中国最古の詩集です。周王朝の初期から春秋時代にかけて、朝廷の祭祀・饗宴の歌、各地方の民間歌謡など計305編を集録したものです。風・雅・頌(しょう)の三つに分類されています。
孔子は「詩三百、一言以て之を蔽(おお)う、曰く、思い邪(よこしま)なし」と言っています。
「詩経の三百篇を一言でいうなら、純粋である。」ということのようです。
無易由言、
由言(ユウゲン)を易(やす)んずる無かれ
言葉を軽んじてはならない
無曰苟矣。
苟(かりそめ)を曰(い)ふ無かれ。
でたらめを言ってはならない
莫捫朕舌、
朕(わ)が舌を捫(おさ)ふる莫(な)し、
我が舌を押さえるものはいないが
言不可逝矣。
言逝(およ)ぶべからず。
一度口に出した言葉は、もとには戻らぬ。
無言不讎、
言として讎(こた)へざる無く、
言葉にも必ず(相手からの)答があるように
無德不報。
德として報(むく)いざる無し。
徳には必ず(相手からの)報いがある。
惠于朋友庶民小子
朋友(ホウユウ)、庶民(ショミン)、小子(ショウシ)に惠(めぐ)めば、
朋友、庶民、若者を慈しめば、
子孫繩繩、
子孫(シソン)繩繩(ジョウジョウ)として、
子々孫々にして絶えることなく、
萬民是不承。
萬民(バンミン)是(こ)れ承(う)けん。
人々は(その恩恵を)受けるであろう。