冠を足にはき、履(くつ)を頭にかぶる、と言う意味から、人の地位や立場、また、物事の価値が上下逆さまであることを表した四字熟語です。
【顚倒:テントウ】は、逆さまにする、と言う意味で「轉(転)倒:テントウ」とも書きます。
夏目漱石『それから』にでていました。
餓えたる行動は、一気に遂行する勇気と、興味に乏しいから、自らその行動の意義を中途で
疑うようになる。
彼はこれをアンニュイ(≒倦怠感)と名付けていた。
アンニュイに罹ると、彼は論理の迷乱を引き起すものと信じていた。
彼の行為の中途に於て、何の為と云う、【冠履顛倒】の疑を起させるのは、アンニュイに
外ならなかったからである。
『それから』は、1909年6月27日より10月14日まで、東京朝日新聞・大阪朝日新聞に連載されました。『三四郎』(1908年/明治41年)・『それから』(1909年/明治42年)・『門』(1910年/明治43年)は
前期三部作と言われています。
定職に就かず、毎月1回、本家にもらいに行く金で裕福な生活を送る長井代助が、
友人平岡常次郎の妻である三千代とともに生きる決意をするまでを描いた小説が、
『それから』です。
後期三部作は『彼岸過迄』(1912年/明治45年)・『行人』(1913年/大正2年)・『こころ』(1914年/大正3年)です。