ふさいだ気持ちをいやし、胸の悶えを取り去るさまを言った四字熟語です。
坪内逍遥『小説神髓』の上巻に出ていました。
【醫】は、悪霊を祓う矢を振りかざし病を治すことを表す字です。その際身を清めるときにお酒が
必要となるのです。
現代の字は、お酒を外した略字の医を用いています。病も治りづらくなるわけです。
【鬱】は、2010年に改定常用漢字が制定されたときに、最多画数(29画)の字として常用漢字になりました。
【排】は、扌+非(音符号) から作られた形声文字です。
非を音符号とした常用漢字に、悲 扉 俳 輩 罪 があります。
【悶】は、門(音符号)+心 から作られた形声文字です。部首は「心」です。
小説の勧善懲悪に裨益(=有益)する所ある由は、先に已にしばしば説きつ。
世人もまた之れを口にする者多し。
殊(こと)に東洋の小説作者は、【醫鬱排悶】の効能と勧善懲悪の裨益とをもて小説、
稗史(ハイシ:小説風の歴史)の目的と心得、専ら勧懲を主眼として稗史を編む者
比比(ヒヒ:並び連なる樣。どれもこれ)是れなり。