【口頭の交わり】と訓読みされまして、口先ばかりで、深い付き合いのないことを言います。
孟郊(モウコウ:751~ 814)の擇友詩(友を択ぶの詩)にある言葉です。5言×12句の詩です。
孟郊は中唐(766~835)の詩人で、協調性に乏しく、人嫌いのために、若い頃は河南省嵩山(スウザン:五岳の一つで、今は世界遺産になっています)に隠れていたそうです。
50歳の時に三度目で進士に及第し、江蘇省溧陽(リツヨウ)の尉となりました。一生不遇だったそうです。
獸中有人性、形異遭人隔。
獣中に人性有り、形異なり、人の隔つるに遭ふ。
獣の心の中に人の様な性がある、姿形は異なって、
人とは分け隔てられるものである
人中有獸心、幾人能眞識。
人中に獣心有り、幾人か能く真に識る。
人の中にも獣の心がある、何人が本当のことを知っているのだろうか。
古人形似獸、皆有大聖德。
古人 形 獣に似るも、皆 大いなる聖徳有り。
古代人は姿は獣に似ていたとしても、皆、大きな聖徳の政治がおこなわれた。
今人表似人、獸心安可測。
今人 表は人に似るも、獣心 安んぞ測るべけん。
今の人は、表面は人に似ているが
獣の心があることをどうして測り知ることができよう
雖笑未必和、雖哭未必戚。
笑ふと雖も未だ必ずしも和せず、哭すと雖も未だ必ずしも戚ならず。
表面で笑ってはいても必ずしも和やかではない、
声をあげて泣いていても必ずしも悲しんではいない。
面結口頭交、肚里生荆棘。
面は口頭の交はりを結ぶ、肚(はら)の裏は荆棘を生ず。
表面的には、口先だけの交際をし、腹のうちには、とげを生じているものである。