春に咲く花も風に吹かれて散り、木の葉も秋には散り落ちるように、この世は絶えず移り変わっている。
この世の無常を譬えた言葉です。
『小町草紙』に【飛花落葉】がでていました。
古(いにしへ)の衣通姫(そとほりびめ)の流れとも申し、観音の化身(ケシン)とも申し、かりに
この世に生れ給ひて、うあく、むあく、衆生(シュジョウ)の迷ひ深き、女人(ニョニン)あまりに
心もなきものの、あはれをも知らず、仏をも礼(ライ)せず、神を拝まずして、いたづらに月日を
送り給ふことを悲しび、色好みの遊女と生れ、【飛花落葉】の世の中、一度(ひとたび)は栄え、
一度は衰ふ、・・・・・・・・・。
『吾輩は猫である』 第2章にも【飛花落葉】が使われています。
冷笑なさってはいけません、極真面目(ごくまじめ)な話しなんですから……とにかくあの婦人が
急にそんな病気になった事を考えると、実に【飛花落葉】の感慨で胸が一杯になって、
総身(ソウシン)の活気が一度にストライキを起したように元気がにわかに滅入(めい)って
しまいまして、ただ蹌々(ソウソウ)として踉々(ロウロウ)という形ちで吾妻橋(あずまばし)へ
きかかったのです。