自分の利益だけをむさぼる欲望のことを言います。
山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。
とかくに人の世は住みにくい。
で始まる、夏目漱石の『草枕』 第一章に【我利私欲】が出ています。
この故に無声の詩人には一句なく、無色の画家には尺縑(セキケン:わずかな絹≒ほんの
小さな画作)なきも、
かく人世を観じ得るの点において、
かく煩悩(ボンノウ)を解脱(ゲダツ)するの点において、
かく清浄界(ショウジョウカイ)に出入し得るの点において、
またこの不同不二の乾坤(ケンコン)を建立し得るの点において、
【我利私慾】の覊絆(キハン)を掃蕩(ソウトウ)するの点において、
――千金の子よりも、万乗の君よりも、あらゆる俗界の寵児(チョウジ)よりも幸福である。
漱石先生は、【我利私慾】をなくしてしまうと、幸せだ、と仰っています。