人情がうすくなり、道徳・風俗が乱れた末の世という意味です。
【澆:ギョウ】は、氵+堯(音符号)から作られた形声文字です。意味は①そそ・ぐ ②うすい、です。
【季:キ】は、禾+子 から作られた会意文字です。意味は①おさない②すえ、です。
【澆季】は、(人情が)うすい、すえ(の世)の意味になります。
【溷:コン】は、氵+圂(音符号)から作られた形声文字です。意味は①にごる ②みだれる です。
【濁:ダク】は、氵+蜀(音符号)から作られた形声文字です。意味は にごる です。
【溷濁】は、にごることの意味になります。
夏目漱石の『草枕』第一章に【澆季溷濁】が出ています。
只(ただ)おのが住む世を、かく観じ得て、霊台方寸(レイダイホウスン)のカメラに【澆季溷濁】の
俗界を清くうららかに収め得れば足る。
この故に無声の詩人には一句なく、無色の画家には尺縑(セキケン:わずかな絹≒ほんの小さな
画作)なきも、かく人世を観じ得るの点において、かく煩悩(ボンノウ)を解脱(ゲダツ)するの
点において、かく清浄界(ショウジョウカイ)に出入し得るの点において、またこの不同不二の
乾坤(ケンコン)を建立し得るの点において、我利私慾の覊絆(キハン)を掃蕩(ソウトウ)するの
点において、
――千金の子よりも、万乗の君よりも、あらゆる俗界の寵児(チョウジ)よりも幸福である。