互いに緊密な関係になっていて、一方がだめになると、他方もだめになってしまうことを表す四字熟語です。
【唇歯】は、唇と歯のことで、どちらも相手にとって密接な関係になってます。
【輔車】は、車と車の添え木のことで、こちらも同じく、関係は密接です。
【唇歯輔車】は『春秋左氏伝』の僖公(キコウ)5年のところに出ています。
『春秋左氏伝』といいますのは、『春秋』という魯(ロ)国の年代記の解説書です。『春秋』が扱っている時代はB.C.722年~B.C.481年で、この時代を名付けて春秋時代といっています。
僖公5年(B.C.655年)の冬の出来事として、
晉の献公が、虢(カク)という国を討つため、遠征を始めます。途中にある虞(グ)の国を通るのが近道なので了解を得ようとして、道を借りたい旨虞に申し込みました。
申し込まれた虞の国では、宮之奇(キュウシキ)が、虞公を諫めました。
「虢と虞は一体ですから、 虢が亡びれば虞も亡びてしまいます。晉の野心に道を開いてはなりません。以前にも晋は我が国を通って虢に遠征したではありませんか。一度だけでも、ひどいことなのに二度も重ねるとは言語道断です。諺に【輔車相依(よ)り、唇(くちびる)亡ぶれば歯寒し】と申しますが、虞と虢の関係を言ったようなものです。わが国を通過させるなど、もってのほかです」
結局、宮之奇の進言は入れられず、晉に道を貸すことを許しました。
通行許可を得た晉は、虞の領土から攻めこんで、虢を滅ぼしてしまいました。
晉軍は帰途、虞に一泊し、不意を襲って虞も滅ぼしてしまいました。