石と石とを打ち合わせて出る火花にたとえて、アッという間のはかない人生である、と白居易は七言絶句 『對酒(タイシュ):酒に對す』で言っています。
蝸牛角上爭何事
蝸牛角上 何事をか爭ふ
カタツムリの角の上(のような狭い世の中)で、何事を争っているのだ。
石火光中寄此身
石火光中に 此の身を 寄す。
石から出る火花のようなアッという間のはかない人生に、この身をまかせ、
随富随貧且歡樂
富(と)みに隨ひ貧(まづ)しきに隨ひて 且(しばら)く 歡樂せよ
金持ちは金持ちなりに、貧しきは貧しきなりに、しばらく楽しむべきである。
不開口笑是癡人
口を開きて 笑はざるは 是れ癡人(チジン)なり。
口を開けて高らかに笑わない者は、痴れ者である。
【蝸牛角上】は、カタツムリの角の上の意味で、人間世界の小さなことをたとえた話です。
『荘子』則陽篇に出ています。
かたつむりの左の角に国を置く触氏と、 右の角に国する蛮氏とが領地を争って戦い、
数万の戦死者を出したという寓話です。