昼寝のことを言います。
【黒甜】は、中国の北方の方言で昼寝を言うそうです。
語構成は【黒甜郷+裡】で、昼寝の世界の裡(うち)にいるという意味になります。
【裡:リ】は、内側の意味で、【裏:リ】は、うらがわの意味です。
『吾輩は猫である』の第七章に【黒甜郷裡】が二度続けて出ています。
かつてここまで登って来て、どこをどう見廻わしても、耳をどう振っても蟬気(せみけ)が
ないので、出直すのも面倒だからしばらく休息しようと、叉(また)の上に陣取って第二の
機会を待ち合せていたら、いつの間まにか眠くなって、つい【黒甜郷裡】に遊んだ。
おやと思って眼が醒さめたら、二叉の【黒甜郷裡】から庭の敷石の上へどたりと落ちていた。
しかし大概は登る度(たび)に一つは取って来る。
ただ興味の薄い事には樹の上で口に啣(くわ)えてしまわなくてはならん。
だから下へ持って来て吐き出す時は大方(おおかた)死んでいる。