【天旋(めぐ)り地轉ず】と訓読みされまして、世の中の変化が目まぐるしいことを表します。
白居易『長恨歌』の51句目にある言葉です。
安碌山の乱のために蜀に避難していた玄宗が、息子の肅宗によって乱が沈められたので、長安に戻ることになったところを詠った部分です。
しかし、避難する途中で将兵の不満を抑えるために楊貴妃を殺さざるを得なかった玄宗は、戻ることに気が進みませんでした。
51 天旋地転迴竜馭
天旋(めぐ)り地転じて 竜馭(リユウギヨ)を迴(めぐ)らし
天は巡り日は移り、帝の車は都へ引き返す。
52 到此躊躇不能去
此(ここ)に到りて躊躇(チュウチョ)して 去る能(あた)はず
この地へさしかかると後ろ髪をひかれ、すすみあぐねる。
53 馬嵬坡下泥土中
馬嵬(バカイ)の坡下(ハカ) 泥土(デイド)の中(なか)
馬嵬の土手の下、その泥の中に
54 不見玉顔空死処
玉顔を見ず 空(むな)しく死せる処(ところ)
玉のような美しい顔を見ることはなく、空しく命を落としたところ
55 君臣相顧尽霑衣
君臣 相い顧(かえり)みて 尽(ことごと)く衣を霑(うるお)す
君臣互いに顔を見合せ、みな涙にくれる
56 東望都門信馬帰
東のかた都門を望みて 馬に信(まか)せて帰る
はるか東に都門を望み、馬の歩むに任せて帰っていった。