【弱の肉は、強の食なり】と訓読されまして、弱いものが強いものの犠牲にされることを言います。
韓愈(カンユ)が僧:文暢(ブンチョウ)の旅立ちに際して送った、『浮屠(フト)の文暢師(ブンチョウシ)を送るの序(ジョ)』に「弱きの肉は、強きの食なり」とあるのに基づいた四字熟語です。初出とも言われています。
『送浮屠文暢師序』の一部を記載します。
『浮屠』は、梵語:Buddha の音訳で『仏』をいいます。転じて、仏教や僧侶もいいます。
夫鳥俛而啄、仰而四顧。
夫れ鳥俛して啄し、仰いで四顧す。
鳥はうつむいて餌をついばみ、首をあげて四方を見まわす。
夫獸深居而簡出。
夫れ獣、深居して簡出す。
獣は深い山奥に栖んでいて、たまに出て来て食物をさがす。
懼物之爲己害也。
物の己が害を為さんを懼るるなり。
他の動物が自分を害するかもしれないと懼れるのである。
猶且不脫焉。弱之肉,強之食。
猶且つ脱せず、弱の肉は強の食。
そのようにしても害をまぬがれない。
弱いものの肉は、強いものの食物である。
今我與文暢安居而暇食、優遊以生死。
今我と文暢と、安居して暇食(カショク)し、優遊(ユウユウ)以て生死す。
今、私と文暢は、安んじて住まいし、暇があって落ちついて食事ができ、
ゆったりとしてのんきに、生き死にする。