心に先入観やわだかまりをもたないで、人の意見を素直に聞ける、心穏やかな状態を言います。
【虚心】は、心にわだかまりをもたないことを言います。
【平気】は、落ち着いて穏かな気持ちを言います。
『学問のすすめ』第十五編に『虚心平気』が出ています。
この雑沓混乱の最中にいて、よく東西の事物を比較し、
この雑然とした思想混乱の社会にいて、よく東西両洋の文明を比較し、
信ずべきを信じ、疑うべきを疑い、取るべきを取り、捨つべきを捨て、
両者の信ずべき点を信じ、疑うべき点を疑い、取るべきは取り、捨てるべきは捨てて、
信疑取捨そのよろしきを得んとするはまた難きにあらずや。
信疑取捨、ともにその道を誤らぬことは、実に難しいことである。
然りしこうして今この責せめに任ずる者は、他なし、ただ一種わが党の学者あるのみ。
しかも今、この責任を担いうる者は、他でもない我々学問に志す者たちである。
学者勉めざるべからず。けだしこれを思うはこれを学ぶに若しかず。
学問に志す者は、その責任を自覚せばならない。
幾多の書を読み、幾多の事物に接し、【虚心平気】、活眼を開き、
多くの本を読み、多くの事実を体験し、冷静公平に鋭い注意を働かせ、
もって真実のあるところを求めなば、信疑たちまちところを異にして、
常に真理の追究を続けなければ、今までの信疑が逆になって、
昨日の所信は今日の疑団となり、
昨日まで信じていたことが、今日は大きな疑問となり、
今日の所疑は明日氷解することもあらん。
今日の疑問が、明日はたちまち解決することもあるだろう。
学者勉めざるべからざるなり。
学問に志す者は、奮励努力すべきである。