あれこれ考えて思いをめぐらすこと、を表します。「千」「万」は数の多いことを示します。
【思】のもとの字は【恖】です。音府は囟(ひよめき:幼児の頭蓋骨の縫合部分)です。心を加えて「思う、考える」の意味となりました。
『おもう』を表す漢字、微妙に使い分けがあります。
【思】は、一般的に頭で考えたり心で感じたりすることを表します。
【想】は、情感を込めて「おもう」場合に使います。
【念】は、「おもい」がゆるぎない場合に使います。
【懐】は、しみじみと「おもう」場合に使います
【憶】は、忘れないで「思い出す」場合に使います。
二葉亭四迷『浮雲』第11囘 取付く島。に【千思万考】が出ています。
唯是もなく非もなく、利もなく害もなく、昇に一着を輸(ユ)する事は文三には死しても
出來ぬ。
ト決心して見れば叔母の意見に負(そむ)かなければならず、叔母の意見に負くまいとすれば
昇に一着を輸さなければならぬ。
それも厭(いや)なりこれも厭(いや)なりで、二時間ばかりと云うものは默坐して腕を拱(く)んで、沈吟して嘆息して、【千思万考】、審念熟慮して屈托して見たが、 詮(セン)ずる所は舊(もと)の木阿弥。