栴檀は双葉より芳し、を略した四字熟語です。
すぐれた才能を持つ人物は、幼いときから人並み外れてすぐれていることのたとえです。
「栴檀」とは、白檀(ビャクダン)のことで香木として用いられます。
白檀は、双葉のときからよい香を放つことから、すぐれた才能を持つ人物は、幼いときからその兆しが見えてくるようです。
「平家物語」殿下乗合に、【栴檀は双葉より芳ばし】と記載されています。
以下、原文と口語訳です。
原文
是こそ平家の悪行(アクギヤウ)の始めなれ。小松殿大きに騒いで。
その時行き向かうたる侍ども召し寄せて、皆勘当(カンダウ)せらる。
「たとひ入道、いかなる不思議を下知(ゲヂ)し給ふとも、など重盛に夢を見せざりけるぞ。
およそは資盛(すけもり)奇怪(キクワイ)なり。
栴檀は双葉より芳(かう)ばし、とこそ見えたれ。すでに十二三にならんずる者の、今は礼儀を
存知してこそ振る舞ふべきに、かやうに尾籠(ビロウ)を現じて、入道の悪名(アクミヤウ)を立つ。
不孝(フケウ)のいたり、汝(なんぢ)一人にありけり、とてしばらく伊勢の国へ追ひ下さる。
されば、この大将をば、君も臣も御感(ギヨカン)ありけるとぞ聞こえし。
口語訳
これこそが平家の悪行の始まりでした。小松殿では、この事を知ると、大騒ぎとなり、
その時参加した侍たちを召し寄せて、皆勘当しました。
たとえ清盛殿がどんなおかしなご命令を下されたとしても、なぜわたしに少しも知らせないのだ。
こうなったのは資盛(重盛の次男)の所為(せい)だ。
『栴檀は双葉より芳ばし』と言われている。すでに十二三歳になる者ならば、礼儀作法を弁えて
振る舞うべきなのに、このような不始末をしでかし、清盛殿の悪名を広めたのだ。
この上ない不孝、罪は全くお前一人にある、と言って、しばらく伊勢国に追い下された。
そういうことで、この大将重盛公をば、後白河院もその近臣もお褒め申したということです。