【璧(ヘキ)を完(まっと)うして趙(チョウ)に帰(キ)す】と訓読されまして、託された璧(宝石)を無事に持ち帰ることを言います。
『史記』廉頗(レンパ)藺相如(リンショウジョ)列伝にある故事です。【完璧】のもとになったお話です。
秦王は十五の城と私の璧との交換を望んでいる。 璧を与えたほうがいいだろうか、与えないほうが
いいだろうか。
秦は強国で、趙は弱い国です。 (秦の要求は)聞き入れないわけにはいかないでしょう。
秦王は、私の璧を手に入れ、私に城を与えなかったらどうしたらいいだろうか。
秦は城と璧との交換を求めています。趙が受け入れなければ、誤りは趙にあります。
一方、趙が璧を与えたのに、秦が趙に城を与えなかったら、誤りは秦にあります。
このふたつのことを比べてみますと、
(璧を与えることを)許して、秦に誤りを負わせたほうがよいでしょう。
誰を使者とすべきだろうか。
相如曰、
相如曰く、
相如が言いました
王必無人、臣願奉璧往使。
王必ず人無くんば、臣願はくは璧を奉じて往きて使ひせん。
王様、どうしても(使者となるべき)人がいないようでしたら、
どうか私が璧を捧げ持って秦へ行く使者とさせて頂きたいと存じます。
城入趙而璧留秦。
城趙に入らば璧は秦に留めん。
城が(趙の)手に入れば、璧は秦に留め置きます。
城不入、臣請完璧帰趙。」
城入らずんば、臣請ふ璧を完(まっと)うして趙に帰らん。」と。
(逆に)城が手に入ないようであれば、
どうか私に璧を無傷のままで趙に持ち帰らせてほしく存じます。
趙王於是、遂遣相如奉璧西入秦。
趙王是に於いて、遂に相如をして璧を奉じて西して秦に入らしむ。
趙王はそこで相如に璧を捧げ持たせ西にある秦へと向かわせた。
藺相如の堂々たる対応で、璧は完(まっと)うされました。