花びらがはらはらと乱れちることを言います。特に桃の花を言います。陶淵明の『桃花源記』の一句です。
桃の花の林に迷い込んだ武陵(ブリョウ)の漁師が、平和で豊かな村を見つけて、もう一度行こうとして果たせなかった物語で、「桃源郷」の語源となった話です
前半、入り口に辿りつくところまでを記載します。そこに【落英繽紛】が出ています。
晉太元中、武陵人捕魚爲業。
晋(シン)の太元中(タイゲンチュウ:376~396年)、武陵(ブリョウ)の人、
魚を捕らふを業と為す。
晋の太元年間に、武陵の人で、魚を取ることを職業としている人がいた。
縁溪行、忘路之遠近。
渓(たに)に縁(よ)りて行き、路(みち)の遠近を忘る。
谷川に沿って(船で)行くうちに、道のりが分からなくなってしまった。
忽逢桃花林。
忽(たちま)ち桃花の林に逢ふ。
突然、桃の花の咲いている林に出くわした。
夾岸數百歩、中無雜樹。
岸を夾(さしはさ)むこと数百歩、中(うち)に雑樹(ざつじゅ)無し。
川の両側に数百歩、林の中は(桃以外の)他の木は混ざってなかった。
芳草鮮美、落英繽紛。
芳草鮮美(ホウソウセンビ)、落英繽紛たり。
香りの良い草が鮮やかで美しく、(桃の)花びらがはらはらと乱れ散っている。
漁人甚異之。復前行、欲窮其林。
漁人(ギョジン)甚(はなは)だ之(これ)を異とす。復た前行し、其の林を窮めんと欲す。
漁師は、この景色をたいそう不思議に思い、
さらに先に進んで、その林の奥を突き止めようとした。
林盡水源、便得一山。
林は水源に尽きて、便(すなわ)ち一山(イチザン)を得たり。
林は川の水源で終わり、すぐに一つの山を見つけた。