牛溲(ギュウシュウ)は、利尿作用があると言われている薬草のことです。
馬勃(バボツ)は、できものに効くと言われている茸の、マグソダケのことです。
何れも薬品ですが、あまり効果がない薬品のようです。それらを並べて、
つまらない物や役に立たないものの喩を言ったものです。
牛溲も馬勃も一応薬です、これを有効に活用するのが腕のいい医者の仕事です。
このことから、人を見る目が確りしていることが、宰相大臣の正しい道である。
韓愈が『進學解:シンガクカイ』で、上に立つ者は人材を見極める力が必要であることを説いています。
玉札、丹砂,赤箭、青芝,牛溲,馬勃,
玉札(ギョクサツ)、丹砂(タンサ)、赤箭(セキセン)、青芝(セイシ)、牛溲、馬勃、
玉札という粉薬、丹砂、赤箭といぅ薬草、青芝という霊芝類、牛尿という薬草、
馬勃というマグソタケ。
敗鼓之皮、俱收並蓄。
敗鼓(ハイコ)の皮、俱(とも)に收(おさ)め並べ蓄え、
それらを破れた鼓の皮などに、みな取り入れ、同じようにたくわえる。
待用無遺者,醫師之良也。
用を待って遺す無き者は、醫師の良なり。
それを必要に応じて残さず処方できるのは、名医である。
登明選公、雜進巧拙、
登すこと明に選ぶこと公にして,巧拙を雜(ま)じえ進め,
(上に立つ者が)人材を登用する時には公明であること、
才能の優劣をも交えて考慮すること。
紆餘為姘、卓犖為傑、
紆餘(ウヨ)を姘(ケン)と為し、卓犖(タクラク)を傑と為し,
紆余(文章能力)のある者を優れた人物とし、
卓犖(才気優れた)者を抜きんでた者として(選ぶことが出来るかどうか)。
とし、
校短量長,惟器是適者,宰相之方也。
短を校(くら)べ長を量り、惟だ器を是れに適する者は,宰相の方なり。
短く劣った所と、長くすぐれた所とをくらべ、
その器量を見抜き、適材適所を行うことこそが、宰相大臣の本来の仕事である。