【酒、極まれば則ち乱る】と訓読みされまして、酒を飲むのもギリギリまで行きつけば乱れてしまい、結果いいことにはならない。という意味です。
戦国時代、齊の淳于髠(ジュンウコン)が、淫楽に耽り長夜の宴を好んでいた威王(B.C.378~B.C.343)を、【酒極まれば則ち乱れ、樂しみ極まれば則ち悲し。万事尽(ことごと)く然(しか)り】と言って諫めました。
『史記』滑稽列伝にあるお話です。
齊の威王は、淳于髠(ジュンウコン)に聞きました、
「先生はどれくらいで酔われるかな」。
淳于髠は、答えました、
「私は一升で酔い、一斗でも酔います」。
威王はその理由を訊きました。
淳于髠が言うには
① 王の御前で酒を飲むと、恐れ多くも這いつくばって一升で酔うのでございます。
② 親のところに立派なお客が訪ねた際には、お相手をするのに、立ったり座ったりで、私は
飲んでも二升を越えずにすぐに泥酔してしまいます。
③ しばらく顔を合わせてない友人と急に酒を飲みかわすときには、楽しい思いで話に盛り上がり
ついつい五・六升くらいは飲んで酔います。
④ わたしも村里の集いで男女に混ざって座って、男女が手を握り合っても処罰されず、
目を見つめ合うことも禁じられない、そんなときには、八升ほど飲んでも
酔うのは二、三度ほどでございます。
⑤ さらに日暮れに近づいて酒宴が終わろうとするときに、座敷の灯火が消されて主人はこの私を残して、
他の客を送り出します。そして、残ったもうひとりの客の絹の肌着の襟がほどき、
濃厚な香気が鼻を刺激します。そのような状況になると、私は気分が高まり、
一斗の酒が飲めるのです。
故曰、酒極則亂、
故に曰く、酒極(きわ)まれば則(すなは)ち亂れ、
そのために「酒を極めれば乱れあり、
樂極則悲。
樂しみ極まれば則ち悲し。万事尽然。
楽しみを極めれば悲しみあり、と申します。
万事尽然。
万事、尽(ことごと)く然(しか)り、と。
そのように万事がその通りでして、
極めるといけない、という言葉がございます、
と述べました。