【婬(イン)を誨(おし)え欲を導く】と訓読みされまして、淫らなことを教えて、欲望の世界へと導くことを言います。
【誨婬】の【誨】は、「おしえる」という意味ですが、ものごとの道理に暗い人に言葉で教えるという意味を含んでいます。「教誨師」という言葉に使われています。
【誨】を含んだ四字熟語に【誨盗誨淫:カイトウカイイン】があります。盗みや淫らなことを教え込むという意味です。詳しくは、今日の四字熟語をご覧ください。
No.1520【誨盗誨淫】カイトウカイイ http://www.fukushima-net.com/sites/meigen/1781
坪内逍遥『小説神髄』上巻の一節です。
唐山(もろこし)の人々が小説を指して誨淫導欲と罵(ののし)りたりしは、
『金瓶梅(キンペイバイ)』もしくは『肉布團(にくぶとん)』等の評なるべく、我が國俗(くにうど)が
物語を擯斥(ヒンセキ)して風儀を紊(みだ)すの書なりといひしは、男女(ナンニョ)の痴情の
隱微を寫して鄙野婬猥(ヒヤインワイ)に流れたりし情史の類(たぐい)を指すものならむ。
然(しか)り而(しか)して『金瓶梅』、『肉布団』ならびに猥褻(ワイセツ)なる
情史の如きは、これ似而非(にてひ)なる小説なり。まことの小説とはいふべからず。