【人は、各(おのおの)能(ノウ)有り】と訓読みされまして、人はどんな人でも、役に立たない人はいない。
『言志後録』216条
『論語』子路篇に、「其の人を使ふに及びてや、之を器にす。」とあります。
孔子は、人を使うという面から『能力』を見ていますが、
一斎先生は、人間の存在にまで昇華させて『能力』を見ているように、私は勝手に解釈しています。
人は各々能有り。器(キ)、使(シ)すべからざる無し。
人にはそれぞれ違った才能があるのだから、
その長所に従ってそれぞれに使う途があるものだ。
一技(イチギ)一芸(イチゲイ)は、皆(みな)至理(シリ)を寓(グウ)す。
一つの技、一つの芸にもそれぞれ立派な奥義が存在している。
詞章(シショウ)筆札(ひっさつ)の如きも、亦是れ芸なり。
詩、文章、手紙を書くのも、また一つの芸である。
蓋(けだし)し器使中(キシチュウ)の一なるのみ。
思うに、皆それぞれに使用に堪える一芸である。
(どんな人間でも役に立たない人間などいない。)