【狗(いぬ)緇衣(シイ)に吠(ほ)ゆ】と訓読みされまして、外見が変われば内面も変わっているだろうと思う喩えです。
『韓非子』説林(ゼイリン)下にでているお話です。
楊朱之弟楊布、衣素衣而出、
楊朱(ヨウシュ)の弟の楊布(ヨウフ)、素衣(ソイ)を衣(き)て出づ、
楊朱の弟の楊布は、白い着物を着て外出したが、
天雨、解素衣、衣緇衣而反、
天雨ふり、素衣を解き、緇衣を衣て反る。
雨が降ってきたので、白い着物を脱いで黒い着物に着替えて帰ってきた。
其狗不知而吠之、
其の狗知らずしてこれに吠(ほ)ゆ、
家の飼い犬はそれとわからずに吠えたてたので、
楊布怒、將擊之。
楊布怒りて、將にこれを擊(う)たんとす。
楊布は怒って、犬をなぐろうとした。
楊朱曰、子毋擊、子亦猶是。
楊朱曰く、子擊つこと毋(な)かれ,子も亦(ま)た猶(な)ほ是(か)くのごとし。
楊朱は言った、おまえ、なぐってはいけないよ。おまえだって、同じようなものだろう。
曩者使女狗白而往、黑而來、
曩(さき)に女(なんじ)の狗をして白くして往き、黑くして來たらしめば、
先にお前の犬が白い色で出て行ったのに、黑くなって帰ってきたら、
子豈能毋怪哉。
子、 豈に能く怪しむこと毋からんやと。
お前、どうして怪しまないでおれようか。