人の意見や批評を気にも留めず、聞き流 すことを表す四字熟語です。
出典は、李白の『王十二の寒夜に独酌して懐(おもう)有るに答う』と題する詩の中に出てきます。この詩は王十二という友人が李白に、「寒夜に独酌して懐有り」という詩を贈ってきたのに対して、李白が答えたものです。友人の「王十二」については名字閲歷(ミョウジエツレキ)等、一切不明だそうです。
この詩は「七言×50句」の長い詩です。 五言もあったり、俳句で言う字余りのようなのも数句入っていました。
王十二から贈られた詩への返答に加えて、李白の人生観なども述べられています。
【馬耳東風】は18句目に出てきます。そのあたりを記載してみます
読み下し詩文 と詩意
詩を吟(ぎん)じ賦(ふ)を作る 北窗(ほくそう)の裏(うち)、
北面の窓際で、詩を吟じ、賦(ふ)を作る (これが君・王十二の境涯である)
萬言(ばんげん)直(あたい)せず、一杯の水。
(折角の名作を出して)多くの言葉を連ねても、一杯の水にも値せず
世人此(こ)れを聞きて皆頭(こうべ)を掉(ふ)る、
世間の人は、その詩賦を聞いても、皆頭を振り、碌に分かりもせず、
東風の馬耳(ばじ)を射るが如(ごと)き有り。
馬の耳に風といったような、塩梅である。
いい詩を作っても【馬耳東風】と聞き流されてしまう、悔しさを詠んでいます。
参考までに李白の作ったこの50句にもわたる長い詩は、大きく分けますと
① 王十二が詩を作っていた時のことを想像し
② 王十二の不遇を慰め
③ 今の世を痛烈に批判し
④ 王十二を、そして李白自身をも、やんわりと過去の賢人を引き合いに出して戒める。
こんな構成になっているようです。