【君子、自ら慊(あきたりな)し】と訓読みされまして、立派な大人は、自分の行為に満足することなく、常に研鑽を積む、という意味です。
【慊:ケン】は、忄+兼(音符号)から作られた形声文字です。兼があるからか、
① 満足する、意味と ② 不満に思う、という二つの相反する意味を持っています。
佐藤一斎先生『言志後録』 96條の一句です。
君子自慊、
君子は自ら慊(ケン)し、
立派な人格者である君子は、自己の行為に満足することはないが、
小人則自欺。
小人は則ち自ら欺(あざむ)く。
小人すなはちつまらない人物は自己の良心を欺いて自己行為に満足しているものである。
君子自彊、
君子は自ら彊(つと)め、
君子は常に足らぬとして自ら努めてやまないが
小人則自棄。
小人は則ち自ら棄(す)つ。
小人はチョットしたことで自ら捨て去るか、自暴に陥ってしまう。
上達下達、落在一自字。
上達と下達(カタツ)とは、一つの自字(ジジ)に落在(ラクザイ)す。
結局上達して聖賢の道に進むか、堕落して下流に落ちていくかは、
いま述べた、慊(ケン)と欺(ギ)、あるいは、彊(キョウ)と棄(キ)の
ただの一字違いに落ち着くのである。