【人生夢の如し】と訓読みされまして、人生は夢のようにはかないものである、という言葉です。
蘇軾の『念奴嬌:ネンドキョウ』という詞に【人閒如夢:人の閒(よ)は夢の如し】として詠われています。
蘇軾(ソショク:1036年~1101年)は北宋第一の文化人であり政治家。字は子瞻(シセン)。号は東坡(トウバ)。三蘇の一人で、父:蘇洵(ソジュン)が老蘇、弟:蘇轍(ソテツ)が小蘇と呼ばれていたのに対して、
大蘇と呼ばれていました。
『念奴嬌』は前段と後段に分かれています。【人閒如夢】は後段の最後のほうに出ています。後段のみを記載します。
遙想公瑾當年、
遙かに想う 公瑾(コウキン)の當年(トウネン)、
はるかに思う、公瑾(周瑜の字)はそのころ、
小喬初嫁了、
小喬 初めて嫁(とつ)ぎ了(お)われり、
小喬を娶ったばかり、
雄姿英發。
雄姿は英發す。
雄々しい姿が輝いていた。
羽扇綸巾、
羽扇(ウセン)と 綸巾(カンキン)、
羽扇を手に、絹の頭巾をかぶって、
談笑閒強虜灰飛煙滅。
談笑の間に、強虜(キョウリョ)は灰と飛び煙と滅す。
(新妻と)談笑する間に、強敵は灰と飛び、煙と消えた。
故國神遊、
故國に神は遊ぶ、
ふるき国に遊ぶ魂、
多情應笑我、
多情 應(まさ)に 我を笑うべし、
多感な私は笑われるだろう、
早生華髪。
早(つと)に 華髪(カハツ)を生ぜしを。
早や白髪になってしまった。
人閒如夢、
人間(ジンカン)は夢の如し、
人生夢の如し、
一樽還酹江月。
一尊(イッソン) 還(ま)た江月(コウゲツ)に酹(そそ)がん。
まずは酒を一尊、江(かわ)に映る月に捧げよう。