犬や馬が飼い主に尽くすほどのささやかな真心、という意味です。そこから転じて臣下が主君に尽くす忠誠の心を謙っていう言葉でもあります。忖度とは違うかもしれませんね。
『史記』三王世家を出典としています。
三王世家では、武帝(在位B.C.141~B.C.87)の子のうち、閎(コウ)旦(タン)胥(ショ)の三人が王位を与えられるまでの経緯が記載されています。
大司馬(軍部大臣)霍去病(カクキョヘイ)が三人の皇子の位を定めることを冀う上奏文の一文に
【犬馬之心】がでています。
臣竊不勝犬馬之心
臣、竊(ひそか)に【犬馬之心】に勝(た)へず
臣(霍去病)は、ひそかに忠誠の心を尽くさずにはおられなくて
昧死願陛下詔有司
昧死(マイシ)して願ふ、陛下、有司に詔(みことのり)し
決死の覚悟で、陛下が有司に詔し、
因盛夏吉時定皇子位。
盛夏吉時に因(よ)りて皇子の位を定めんことを。
盛夏の吉日吉時をもって、皇子の位を定められんことを願う次第であります。