いろいろの化け物。山中の怪物と水中の怪物。とにかく、わけの分かんないバケモノを表します。
【魑:チ】は、山林の精気より生じるバケモノ。
【魅:ミ(呉音)】は、もののけ。バケモノ、の意味です。
【魍:モウ(呉音)】は、山水・木石の精気から生じるという怪物。
【魎:リョウ】は、山川に住むという想像上の怪物。
古来分けの分かんないバケモノを表現した言葉です。
『春秋左氏伝』魯宣公三年(B.C.606)の時に、楚の荘王が「鼎の軽重」を周の太夫:王孫滿(オウソンマン)に問う場面があります。
王孫滿は(ムカッとしながらも)答えました、
鼎の価値は、所有者の徳で決まるのであって、鼎の重さには無関係ありません。
周は衰えたりと言われながらも、天命はまだ周にあります。
(南蛮人のお前なんかが、鼎の軽重を問うには10年早い、帰れ。
王孫滿はそんな気持ちだったんじゃないでしょうか)
(冷静をよそおった)王孫満は、夏殷の例を持ち出して語りました。
【魑魅魍魎】のところを掲示します。
夏の全盛期、王は人民に【魑魅魍魎】の恐ろしさを周知徹底させました、
故民入川澤山林、不逢不若。
故に民は川澤(センタク)山林(サンリン)に入るも、不若(フジャク)に逢(あ)わず。
人民は沼沢、山林に踏み入っても、魔物にも逢わず、
魑魅魍魎、莫能逢之、
魑魅魍魎、能くこれに逢うこと莫く、
山川のバケモノたちに、取りつかれることもなく
用能協于上下、以承天休。
用(もっ)て、能く上下を協(かな)えて、以て天休を承(う)く。
かくて夏王の徳は上下をしっかりと一致させ、天祐をさずけられました。
旧制第一高等学校の寮歌『嗚呼玉杯に花うけて』の五番に【魑魅魍魎】が影をひそめています。
行途(ゆくて)を拒むものあらば
斬りて捨つるに何かある
破邪の剣を抜き持ちて
舳(へさき)に立ちて我呼べば
魑魅魍魎も影ひそめ
金波銀波の海静か