【主一(シュイツ)にして適(ゆ)かず】と訓読みされまして、
物事に対するには、心をその一事だけに集中して、他のことに散らさないこと。
また、精神を一つに集中して、他のことに心を移さないことを言います。
孔子が、國を治めるには、敬(つつし)んで政事に集中し、国民に信頼されるように、と言ったことに対して、1600年ほど後、南宋の朱熹が『敬んで』の意味を解説した言葉が【主一無適】です。
『論語』學而篇の本文は、
子曰く、千乘之國を道びくに、① 事を敬(つつし)みて信、
② 用を節して人を愛し、
③ 民を使うに時を以ってす。
現代語訳しますと
大きな国を治めるには、① 慎重に事業を行なって信義を守り、
② 公費を節約して国民を大切にし。
③ 国民をボランティア等で使う際には、しかるべき季節にせよ。
これに対して朱熹は、①『事を敬(つつし)みて信』の『敬』について解説しています。
敬者、主一無適之謂。
敬は、【主一無適】の謂なり。
敬は、心をそのひとことだけに集中し、他のことに散らさないことである。
敬事而信者、敬其事而信於民也。
事を敬んで信は、其の事を敬んで民に信あるなり。
事を敬んで信というのは、心を込めて政事を行うと国民も政府を信用するようになる。