人は容貌を厚く飾って、こころの動きを深く隠しているものだ、という意味です。
【厚貌:コウボウ】、は親切で立派に見える顔つきをいいます。
【深情:シンジョウ】は、奥深くに隠した心です。
『荘子』列禦寇(レツギョコウ。人名です、列子のことです)を出典としています。
孔子曰
孔子 曰く
孔子が言いました
凡人心險於山川、
凡(およ)そ人の心は山川より險(けわ)しく
およそ人の心は山川よりも険しく、
難於知天。
天よりも知り難し。
天よりも、わかりにくい。
天猶有春秋冬夏旦暮之期、
天には猶(な)お春秋冬夏旦暮(タンボ)の期(キ)あるも、
天には春夏秋冬の四季や朝晩という決まった区切りがあるが、
人者厚貌深情。
人は厚貌深情なり。
人は容貌を厚く飾って、こころの動きを深く隠しているものだ。
故有貌愿而益、
故(ゆえ)に貌(かたち)は愿(きまじめ)なるも益(おご)るものあり、
だから、外からの様子では生真面目そうでいながら実は気ままに驕るものがあり、
有長若不肖、
長(チョウ)ずるも不肖(フショウ)なるものあり、
優秀な人物に見えながら実は愚かなのがあり、
有順懁而達、
順懁(ジュンカン)なるも達(タツ)なるものあり、
愼重緻密に見えながら実は勝手放題なのがあり、
有堅而縵、
堅(ケン)なるも縵(マン)なるものあり、
引き締まって見えながら実は散漫なのがあり、
有緩而釬。
緩(カン)なるも釬(カン)なるものあり。
ゆとりがあるように見えながら実は性急(せっかち)なのがある。