お酒のことを言います。
お酒を飲むと憂さ晴らしになるということから、気取って、お酒のことを【忘憂之物】などと言ったまでです。
陶淵明の『飲酒』二十首のなかの「其の七」に、【汎此忘憂物:此の忘憂の物に汎(う)かべ】という形で詠われています。
中国では、お酒に菊の花を浮かべることがよくあるそうです。
秋菊有佳色, 秋菊(シュウキク) 佳色(カショク) 有りて,
いい色合いの秋の菊。
衷露採其英。 露に衷(ぬ)れて 其の英(はなぶさ)を採(つ)む。
露にぬれ つむは花びら、
汎此忘憂物, 此の忘憂の物に 汎(う)かべ,
この忘憂の物に汎べて、(酒に菊花を浮かべ)
遠我遺世情。 我が世を遺(わす)るるの情を 遠(とおざ)く。
この世のことなど 忘れましょ、
一觴雖獨進, 一觴(イッショウ) 獨(ひと)り進むと 雖(いへど)も,
一人で杯をすすめるうちに、
杯盡壺自傾。 杯(ハイ) 盡(つ)きて 壺(コ) 自ら 傾く。
酒もなくなり、壺はカラ。
日入羣動息, 日入りて 羣動(グンドウ) 息(や)み,
日が沈んであたりが静か、
歸鳥趨林鳴。 歸鳥(キチョウ) 林に趨(おもむ)きて 鳴く。
ねぐらに帰る鳥、林で鳴いている。
嘯傲東軒下, 嘯傲(シュウゴウ)す 東軒(トウケン)の下,
自由気ままに、くつろぐ軒端。
聊復得此生。 聊(いささ)か 復(ま)た 此の生を 得ん。
お酒のおかげで元気になった。