【天下に独歩す】と訓読みされまして、天下をひとりわがもの顔に歩くこと、また天下に肩を並べる者がいなく、ずばぬけていることを表します。
奇抜な弁論で天下を驚かした後漢の戴良(タイリョウ)が自分を孔子や禹王になぞらえて、今の世に自分に並ぶ者はいないと豪語した故事に基づいた四字熟語です。
良既高達、而論議尚奇、多駭流俗。
良、既に高達(コウタツ)して、論議奇を尚(たっと)び、
流俗(リュウゾク)を駭(おどろ)かすこと多し。
戴良(の才能)は高く達したが、論議は、独特を好んで、世俗の人を驚かせた。
同郡謝季孝問曰、
同郡の謝季孝(シャキコウ)問ひて曰く、
同郡の謝季孝が質問しました
子自視天下孰可為比。
子、自ら天下を視て孰(たれ)か比と為すべきと。
あなたが天下を見たとき、誰があなたに比べられるでしょうか
良曰、
良、曰く、
戴良は答えました
我若仲尼長東魯、大禹出西羌、
我は仲尼の東魯(トウロ)に長じ、大禹の西羌(セイキョウ)に出(い)づるが若く、
私は魯國の仲尼(孔子)、西羌出身の偉大な禹のように、
独步天下。誰与為偶。
天下に独步す。誰か与(とも)に偶(グウ)を為さんと。
天下に一人の存在である。誰が共に肩を並べるだろうか。