喙(くちばし)の長さが三尺もあるという意味から、弁論が達者なことを言います。
「喙長」はくちばしの長さと言う意味です。「三尺」は長いことのたとえです。
『荘子』徐無鬼(ジョムキ:人の名前)篇の一節です。少々長文ですが。
仲尼之楚,楚王觴之。
仲尼(チュウジ)楚に之(ゆ)く,楚王これに觴(ショウ)す。
仲尼(孔子)が楚の國に行ったとき、楚王は彼のために酒宴をひらいた。
孫叔敖執爵而立、
孫叔敖(ソンシュクゴウ)爵(シャク)を執(と)りて立ち、
孫叔敖が爵(さかずき)を捧げ持って立ち、
市南宜僚受酒而祭。
市南宜僚(シナンギリョウ)酒を受けて祭る。
市南宜僚がその酒を受けて地にそそいで祭った。
曰、古之人乎、於此言已。
曰く、古えの人か、此において言わんのみ。
(楚王は)言いました、古風のゆかしい人よ。この場で何か話してほしい。
曰、丘也聞不言之言矣、未之嘗言。
曰く、丘や不言の言を聞くも、未だこれを嘗て言わず。
(孔子が)言いました、私は不言の言ということを聞かされていますので、
これまで話したことはありませんでしたが、
於此乎言之。
此に於いてかこれを言わん。
それではこの場でそれについて話してみましょう。
市南宜僚弄丸而兩家之難解、
市南宜僚は、丸を弄して兩家の難を解(と)け、
市南宜僚さんは、お手玉遊びをして(反乱軍の脅迫をしりぞけ)それによって謀反を
無事におさめました。
孫叔敖甘寢秉羽而郢人投兵。
孫叔敖は甘寢(カンシン)し羽を秉(と)りて郢人(エイひと)も兵を投ぜり。
孫叔敖さんは気楽に寝そべったり飾り羽を手に取って舞ったりして、それによって
国民は武器を投げ捨て(て平和に生き)るようになりました。
丘願有喙三尺。」
丘は喙(くち)あること三尺なるを願うのみ。
(お二人のふるまいこそ、不言の言です)わたしも長いくちばしで黙っていたいものです。