褒め過ぎることと、悪く言い過ぎること、を言います。『荘子』人間世(ジンカンセイ)篇にある言葉です。
人間世は人々の交わる世の中という意味です。具体的な処世の問題が述べられています。
孔子が言いました。
人が交際する場合、近くに居るときは誠心を以て仲良くやっていけますが
遠方では、言葉の取り違えなどがあったりして中々大変です。
夫(そ)れ両(ふた)つながら喜び、両(ふた)つながら怒るの言を伝うるは、
交際の双方がともに喜んだり、ともに怒っていたりするとき言葉を伝えるのは
天下の難(かた)き者なり。
非常に難しいことです。
夫れ両つながら喜ぶは必(かなら)ず溢美(イツビ)の言多く、
つまり双方が喜んでいる場合は、必ず相手を褒めすぎた言葉が多くなり
両つながら怒るは必ず溢悪(イツアク)の言多し。
双方が怒っている場合は、必ず相手を悪く言い過ぎた言葉が多くなる。
凡(およ)そ溢の類(たぐい)や妄(モウ)なり。
すべて度をすぎた言葉は事実から離れ、
妄なれば則(すなわ)ち其のこれを信ずるや莫(うす)し。
事実から離れたのではその信用も薄く
莫(うす)ければ則ち言を伝うる者に殃(わざわい)あり。
信用が薄いのではその言葉を伝えた者がわざわいを受けることになる。