【賢を妬(ねた)み、能を嫉(そね)む】と訓読みされまして。優秀で能力ある人に嫉妬することを言います
『史記』高祖本紀の中のエピソードです。
天下は大いに安定しました。高祖は、洛陽に首都をおき、諸侯はみなかれの臣下として
仕えました。高祖は洛陽の南宮において酒宴を開きました。
高祖はいいました。
『諸侯と大将の各位は、朕に腹蔵のない本当の気持ちを言ってほしい。
わしが天下を取った理由は何だろうか、項羽が天下を失った理由は何だろうか』
高起(コウキ)と王陵(オウリョウ)が答えて言いました。
『陛下は傲慢で人をばかにされ、項羽は情愛に富んで人を可愛がりました。
しかし、陛下は人を用いて城や土地を攻略させ、降伏したところには、
その功績に応じて、本人さずけ、天下と利益を分かたれました。
項羽妬賢嫉能、
項羽は賢を妬(ねた)み能を嫉(そね)む、
項羽は優秀で能力ある人間を嫉妬し、
有功者害之、
功ある者はこれを害し、
功績をたてたものは痛めつけ、
賢者疑之。
賢なる者はこれを疑ふ。
優秀なものには疑いの目を向けました。
戦勝而不予人功、
戦い勝つも人に功を予へず、
勝利を収めても人に功を与えず、
得地而不予人利。
地を得るも人に利を予えず。
土地を攻略しても人に利益を与えませんでした。
此所以失天下也
此れ天下を失いし所以(ゆえん)なり
これが天下を失った理由です。