簡単に得られる信用という意味です。
【軽】は、①かるい。 ②かろやか。 ③かろんじる。④むやみに。などの意味があります。
【便】は、①つごうがよい。 ②便り、音信。 ③気に入る。 ④くつろぐ。 ⑤てがるな。
⑥口達者。 ⑦身軽な。 ⑧くそ、べん。⑨すなわち。などの意味があります。
【軽便】は、軽の①と、便の⑤ から、「軽く手軽に」となります。
『吾輩は猫である』の11章 後半に【軽便信用】が出ています。
「煙草でもですね、朝日や、敷島をふかしていては幅が利かんです」と云いながら、
吸口に金箔のついた埃及(エジプト)煙草を出して、すぱすぱ吸い出した、
「そんな贅沢をする金があるのかい」
「金はなかばってんが、今にどうかなるたい。この煙草を吸ってると、大変信用が違います」
「寒月君が珠を磨くよりも楽な信用でいい、手数がかからない。軽便信用だね」と迷亭が寒月にいうと、
寒月が何とも答えない間に、三平君は
「あなたが寒月さんですか。博士にゃ、とうとうならんですか。あなたが博士にならんものだから、
私が貰う事にしました」
「博士をですか」
「いいえ、金田家の令嬢をです。実は御気の毒と思うたですたい。
しかし先方で是非貰うてくれ貰うてくれと云うから、とうとう貰う事に極めました、
先生。しかし寒月さんに義理がわるいと思って心配しています」