【紅顔 憐れむべし】と訓読みされまして、元気で若々しかった青年も、今では白髪の老人になってしまい、残念なことである。という意味で、紅顔な美少年にうっとりしているわけではありません。
劉希夷(リュウキイ:651年~679年)の『白頭を悲しむ翁に代わる』と題した詩に出てきます。
この詩の出来のよさに叔父の宋之問(ソウシモン)から譲ってくれといわれたのを、劉は断りました。怒った叔父は下僕を遣わして劉を殺させたという伝説があります。
『代悲白頭翁:白頭を悲しむ翁に代わる』は26句からなる七言古詩です。
9句~16句を下記に示します。
有名な『年年歳歳 花相い似たり、歳歳年年 人同じからず』の句を含んでいます。
9 古人無復洛城東 古人 復(ま)た洛城の東に無く
昔のあの人は、もう洛陽の東の郊外にはいなく、
10 今人還對落花風 今人(コンジン) 還(ま)た対す 落花の風
今、ここにいる人が、花を散らす無常の風に対面す。
11 年年歳歳花相似 年年歳歳 花相い似たり
毎年、花は同じように咲き、
12 歳歳年年人不同 歳歳年年 人同じからず
毎年、見る人は同じではない。
13 寄言全盛紅顏子 言(ゲン)を寄す 全盛の紅顔子(コウガンシ)
分かって下さい、今を盛りとする紅顔の美少年
14 應憐半死白頭翁 応(まさ)に憐れむべし 半死の白頭翁
どうか死のせまる白髪の翁を憐れんでほしい。
15 此翁白頭眞可憐 此の翁(オウ) 白頭(ハクトウ) 真(まさ)に憐れむべし
この白髪の翁はまことに憐れなものよ、
16 伊昔紅顏美少年 伊(こ)れ昔 紅顔の美少年
これでもかっては紅顔の美少年。