「人を思いやる気持ち」、「人の不幸をあわれみいたむ心」を表す四字熟語です。
現在では「惻隠の情」という使われ方が多いようです。
【惻隠】の【惻】はいたむ、あわれむの意味があります。
則のグループ字に、「法則」、「側面」、「測定」 等の字があります。
【隠】はかくす、かくれると言う意味の他に、いたむ、あわれむの意味があります。
この【惻隠之心】は『孟子・公孫丑(コウソンチュウ)上』に出てくる言葉です。
例えば、よちよち歩きの子供が今にも井戸に落ちそうなのを見かければ、誰でも「危ない!」と言って、助けるでしょう。
これを、人が本能的に持っている【惻隠之心】と言います。
これが孟子の「性善説」の根底をなすものです。
他にも三つの心がありまして、合わせて「四端(シタン:四つの基本)」と言います。
【惻隠之心】と同様に性善説の根拠となっています。
① 【惻隠(ソクイン)之心】・・・仁の端(はじめ)なり。
あわれみの心が無い者は、人間ではない。
② 【羞悪(シュウオ)之心】・・・義の端(はじめ)なり。
悪を羞(は)じ、憎む心が無い者は、人間ではない。
③ 【辞譲(ジジョウ)之心】・・・礼の端(はじめ)なり。
譲りあう心が無い者は、人間ではない。
④ 【是非(ゼヒ)之心】・・・・・智の端(はじめ)なり。
善し悪しを見分ける心が無い者は、人間ではない。
孟子に言わせると、四つの内、一つでも欠けると人間ではないと、言うことになるのでしょうか。
ただ残念なのは、【惻隠之心】については、井戸に落ちそうな子供を例にとって解りやすく説明してますが、その他の【羞悪之心】、【辞譲之心】、【是非之心】については一言もありません。