【隨珠をもって雀を彈つ】と訓読みされまして、『隨侯の珠』と言われるような宝石で雀を彈つというように、用いるものが適当でないことをいいます。
また、得るところが少なく失うことが多い事の喩でもあります。
『荘子』讓王篇の故事です。
今且有人於此,
今 此(ここ)に人あり、
いまここに一人の人物がいるとしよう。
以隨侯之珠彈千仞之雀,
隨侯の珠を以て千仞の雀を彈(う)たば,
そして、隨侯の名珠を彈(はじ)き丸(だま)にして、
千仞の高さにいる雀を彈(う)ったとすれば、
世必笑之。
世は必ずこれを笑わん。
世間の人々はきっとそれを物笑いにするだろう。
是何也。
是れ何ぞや。
それはなぜだろうか
則其所用者重而所要者輕也。
則ち其の用うる所の者重くして、要(もと)むる所の者輕ければなり。
つまり彼が手段として用いたものが貴重なもので、
目指して求めたものがつまらないものだからだ。
夫生者,
夫れ生は、
そもそも生命というものは、
豈特隨侯之重哉!
豈に特(ただ)に隨侯の重きのみならんや。
とても隨侯の珠どころではない貴重なものだ(が、人々 にはそれが分からないのだ)。