【生は寄なり、死は帰なり】と訓読みされまして、今生きているのは、仮にこの世に身をおいているだけで、
死ぬことは、本来の場所に帰ることである、という考え方の表現です。
『淮南子』精神訓に記載のある故事です。
古代中国、夏王朝の祖、禹が長江を渡っていた時、突然龍が船を背負い、船中の人は大騒ぎになりました。
禹は笑っていいました。
我受命于天、
我、命を天に受け、
朕は天命を受け、
竭力而勞萬民,
力を竭(つく)して萬民を勞(いたは)る。
力を尽くして万民を慰撫(イブ)する。
生寄也,死歸也,
生は寄なり、死は歸なり。
生は一時の寄宿、死は永遠の帰宅、
何足以滑和。
何ぞ以て和を滑(みだ)るに足(た)らん、と。
何ぞ心の和を乱すに足りようぞ。
禹が、龍を蜥蜴(とかげ)を見るように顔色一つ変えないでいると、龍はついに耳を垂れ、
尾を振って逃げ去りました。