夫婦の仲が極めて睦(むつ)まじいことを表す四字熟語です。
【鴛】は、オスのおしどり、【鴦】は、メスのおしどりをいいます。雌雄がむつまじく離れないので、夫婦仲が良いように見えることから【鴛鴦の契り】などと、一生添いとげるようなイメージを与えていますが、真っ赤なウソ。
オシドリの夫婦がいかにも仲よさそうに、ぴったりと寄り添っている様子が見られのは、繁殖期だけです。これは交尾が終わった雄が自分の子供を産んでもらうために、他の雄が雌にちょっかいを出さない様に、ガードしているからだそうです。
オシドリは、同じ相手と一生添い遂げることはないそうです。毎年相手を変えます。しかも、一夫一婦とは限りません。雄も雌も、複数の相手を持つことがあります。浮気をするということでしょうか(チガウカ)。繁殖期だけは雄と雌とが一緒にいますが、それ以外の時期は別々に暮らします。子育ては雌だけが行ない、雄は知らん顔だそうです。
白けちゃいますね。
人間が【揣摩臆測(シマオクソク:根拠無く推測すること)】を逞(たくま)しくして勝手に作り上げた四字熟語ですから、【鴛鴦の契り】などと言われているのは、オシドリにしてみれば迷惑な話なんでしょうね。
『捜神記(ソウジンキ)』という東晋の干宝(シホウ)が著した怪異小説に、「鴛鴦有り、雌雄一つなり」 と言う文章があります。
また『唐詩選』に盧照鄰(ロショウリン:637年?~689年)の「長安古意」という七言×68句の詩がありまして、その中の20句目と21句目に鴛鴦が登場します。
20句目 : 願わくは鴛鴦と作(な)りて仙を羨(うらや)まじ
あなたと仲良く連れ添いたいわ。それが出来たら不老不死の仙人なんか、羨ましいもんですか。
21句目 : 比目(ヒモク) 鴛鴦 真に羨む可(べ)し
比目の魚、鴛鴦の鳥こそ羨ましいかぎり、行くも帰るも二人連れ。
干宝(シホウ)、盧照鄰(ロショウリン)ともに騙(だま)された口ですね。
5月10日~16日は愛鳥週間です。