国家権力が憲法の保障する基本的人権を侵犯すること。また私人の間で、顔役・ボス・雇い主などが、弱い立場にある人々の人権を侵犯することにも云う。『広辞苑・第六版』より。
【人権】は、人間が人間として生まれながらに持っている権利。実定法上の権利のように恣意的に
剝奪または制限されない。基本的人権。『広辞苑・第六版』より。
【蹂躪】は、ふみにじること。ふみつけること。
【蹂】は、足+柔の形声文字です。柔を含む字に「鞣:なめしがわ」があります。
「その上に」、「更に」と言う意味で「かててくわえて」と言ういい方をする時があります。それを
漢字で表記すると「糅てて加えて」となり、「糅」は「ま‐じる」、「ま‐ぜる」の意味をもっています。
【躪】は、足+(門+隹)からできる形声文字です。【躙】は【躪】と同字です。足偏をとった「藺:リン」の
意味は「いぐさ」です。
【蹂躪】の熟語が『漢書・王商(オウショウ)伝』に出てきます。
建始三年(B.C.30年)秋、京師(ケイシ:首都。この時代は長安)の民、故なくして相ひ驚く。言ふ、大水至ると。百姓(ヒャクセイ:人民)奔走(ホンソウ)して、相ひ蹂躪す。老弱(ロウジャク:老人と若者)號呼(ゴウコ:大声で呼ぶこと)し、長安中大いに亂(みだ)る。
建始三年(B.C.30年)秋、長安の市民が、「洪水が来る」と叫び出し、大騒ぎになりました。
市民は逃げるために、お互い踏みつけあいながら右往左往していました。老いも若きも大声で
喚(わめ)きたて、長安の町はパニック状態になりました。
結局この騒ぎはデマであることが分かり、事なきを得ました。
この騒ぎに対して王商(オウショウ)は事実無根の流言であることを見抜き、的確な判断をしました。時の皇帝成帝(セイテイ)は王商を大いに信用し丞相(ジョウショウ:大臣)にしました。